ウォレス線
●生物の進化を二分したわずか30キロの海峡、生物学者が紐解く「ウォレス線」の謎
ヤフーニュース(7/14(月) 18:00)に 、Forbes japanのウォレス線の記事が配信された。めずらしく真っ当な記事なので取り上げる。
1. ロンボク海峡とウォレス線
記事は「バリ島の東側で海岸に立ち、東を見てみよう。海峡の向こう側、水平線上にロンボク島が見えるはずだ。ロンボク海峡として知られる、この幅約34kmの狭い海が、バリ島とロンボク島を隔てている。モーターボートだと1時間ほどで航行できることを考えると、動物たちは(少なくとも鳥類であれば)、この海峡を渡れそうに見える。それにもかかわらず、何かが動物たちを押し留めている。それは嵐でも、捕食者でもない。目に見えない境界線が移動を阻んでいるのだ。」として、動物の移動を妨げるロンボク海峡を通る境界線「ウォレス線」を紹介する。ウォルス線は、1868年にアルフレッド・ラッセル・ウォレスが提唱した。
2. ウォレス線と動物相
記事は「ウォレス線の西側にあるボルネオ、スマトラ、ジャワといった島々で遭遇するのは、アジアに深いルーツを持つ、トラやサイ、ゾウ、霊長類などの動物だ。一方、この線をまたいで東方に向かい、(バリ島を除く)小スンダ列島やスラウェシ島、ニューギニアに行くと、動物相はオーストラリア系に様変わりする。森の木々を行き来する樹上性のポッサムなどの有袋類、コカトゥーと呼ばれる大型のオウム、ハリモグラなどの「卵を産む哺乳類」が現れるはずだ。」とウォーレス線を挟んだ東西の動物相が違うことを紹介する。
3. ウォレス線ができた原因
記事は、「直近の氷河時代のさなかには、海水面が今よりも下がっており、東南アジアの島々の多くは、陸橋によりアジア大陸とつながっていた。これにより、さまざまな動物の種は、自由にどこにでも移り住めていた。だが、ロンボク海峡の深い海は、決して干上がることはなかった。」として、海峡の深さがウォレス線ができた原因だとする。ロンボク海峡の水深は約1,000 mである。
4. 何が真っ当か
1) 生物地理
生物の地理的分布を研究する学問が生物地理である。2つの島や大陸で生物が共通な場合、@生物が自力で移動、A陸橋による移動、Bプレートによる島・大陸移動で説明される。
@は鳥の移動や種子や動物の風・海流に乗っての移動がある。Aは昔は陸続きだったが、海面上昇で海峡ができた場合である。氷期前後の津軽海峡の場合がある。そして現在、生物地理はほぼすべてBのプレートによる島・大陸移動で説明される。例えば、マダガスカのキツネザル、カメレオン、バオバブなどの固有種は、ダガスカル島がアフリカ大陸から異動して孤立したためだと説明される。しかし、マダカスカル島とアフリカ大陸の間には水深 2、500 〜 3,000 mのモザンピーク水道がある。 そして、モホ面は連続している。Aの陸橋でも説明できる。
2) 海峡形成と海面上昇
ロンボク海峡は約 200 万年前に地続きの陸橋が海面上昇によって海面下に沈んで形成された。200 万年前でいろいろな証拠があるから、プレート移動では説明できない。だから、海峡形成で説明する。
モザンピーク水道の場合、始新世(約5,600万年前〜3,390万年前)に形成された。大昔で証拠は少ないないから、プレートで移動したと説明できる。モザンピーク水道で陸橋説が成立するためには、始新世から現在までに海面が 2、500 〜 3,000 m上昇する必要がある。
地球の歴史の中で海洋の海深がどのように変化したのかに定説はない。プレート説はほぼ一定とする。陸橋説の人は海深は徐々に増してきたと考える。評者は後者である。評者は生物地理は陸橋説で説明するのが正しいと考えているので、上のウォレス線の記事は陸橋説の説明なので、。めずらしく真っ当な記事だと思った。
|